インフォームド・コンセントと癌告知

インフォームド・コンセント

最近テレビや新聞で癌の話題をよく耳にします。実際不必要なくらいの知識が私たちの目の前で展開されています。その中には、まだ医学会でも結論の出ていない事柄が、あたかも普通に行われているように言われたりしています。癌のことは日進月歩の研究成果があり、報道するマスコミの人達には記事に注意深い吟味を考えてほしいものです。

癌の告知

緊張の一瞬

さてこのような世の中にあって、私たち診療に携わる医師にとって、目の前で癌を診断したとき、それをどのように患者さんへ伝えるべきか大変な緊張を覚える一瞬なのです。私自身は十数年前より早期の癌の時にははっきりと「あなたは癌にかかっています」と述べてきました。まだ以前にはそうした言葉に怒りや不信感をあらわにした人たちがおられました。最近ようやく、冷静に話を聞く人が増えてきました。癌は確かに恐ろしいものです。静かに突然、背後から襲いかかるようにふりかかってくるものなのです。だからといって逃げていては何にもなりません。癌は正しくそれを知って、恐れるべきものなのです。

乳癌

最近乳癌では、たとえ遅れていてもはっきりとその事をお教えせざるを得ない状況にあります。それは週刊誌等を通じて、女性はあまりにも知りすぎてしまったというか、不確定なことまで不十分な知識を習得してしまったことにあります。乳癌は全身病といわれ、発見した時点でその将来はほぼ定まっていると考えられています。胃癌でも、タレントの逸見政孝さんがかかって話題になったように、進行スピードの早い細胞の癌もあれば、私が経験した症例のように10年間かかって5mm大の胃癌を確定したスピードの遅い癌もあります。大腸癌などもその殆どは進行癌になるには3~5年はかかっています。

大腸癌

殊に最近では大腸癌が話題になっていますが、ポリープは癌の初期のものと理解されつつあります。これははっきり言って間違いです。ポリープでも癌になるのはその極わずかしかないのです。こういうことを知っていただいて初めて医者と患者の間にインフォームド・コンセントという病気を中心とした理解と信頼の和が生じてくるものと考えます。

もし、あなたが癌にかかったら・・・?

さてあなたはもし癌にかかったとき、はっきり医師からその告知をしてほしいと思いますか。私は消化器系の進行癌のときは(悪性腫瘍)といって癌の“が”の一言も現在はいいません。しかしあと4~5年もすれば(あなたはあと何年ぐらいの寿命)と言わねばならない時代がくるように思われます。

告知は必要な条件

それはあのタレント逸見政孝さんの騒動のように、医師と患者側の言った言わないの紛争が増えているような気配があり、患者側にとってはおいしい話のみが耳に残り、医師側には納得さしえたという早合点が残ります。治療がうまくいっている場合はいいのですが、うまくいかないことが生じてきたときに問題が発生します。そういう事態を防ぐためには癌としての明らかな告知は必要な条件となってくると考えられるのです。

心の準備・・・

癌の告知は突如やってきます。される立場には大変なショックであることは想像に難くありません。しかし人間である以上、いつかはかかるかもしれないのが病気です。その時にどのように話を受け止めるべきか、ある程度の心の準備を決めておくことは必要なのではないでしょうか。

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