自己免疫性胃炎(A型胃炎)

【No.5】自己免疫性胃炎(A型胃炎)

この項目は少々むつかしいですが、特殊な胃炎の話です。

当院ではここ25年の間に50名超す方に発見し、ご本人に通知し追跡しておりますが、男性に無関心な方が多く困っています。
この病変は60-70歳代を中心の老高齢者にみられ、男女ともにありますが、やや女性に多くみられる特異な慢性萎縮性胃炎です。
その臨床的意義は、この中からすでに3人の胃癌発症を見出しており、3/50人0.06という数字は決して少ないものではありません。幸い当院では非常に速い段階の早期癌のうちに発見し内視鏡的に治療・完治しております。
本症の特徴は、胃の入り口側(胃の半分の胃酸を産出する胃壁細胞体部腺領域)が激しく傷んで委縮性変化を呈し、一方胃出口側半分(前庭部領域)は体部腺領域ほど傷まず正常粘膜を見せます。これを定型的なA型胃炎と呼称し、日本人に多いピロリ菌感染者には本症を呈することは多くありません。 この前庭部領域の粘膜深層には、胃酸を分泌させるガストリンという分泌ホルモンを含むガストリン細胞が多く占めています。

さて、人の胃は食べ物を胃酸でこなして、次のアルカリ成分の十二指腸で中性にして小腸へ送ります。そのほとんど中性の食物をこなす胃酸を出す機構を、脳中枢からのプロトンポンプ機構とガストリン分泌が受け負います。
食物が胃に入ってくると、それが中性に近いだけにプロトン機構を背景に前庭部線領域のガストリン細胞を刺激し、ガストリンが血中に湧出されます。
そのガストリン分泌ホルモンが胃体部腺領域の胃酸分泌細胞を刺激して胃内に胃酸が産出されてくるというのが胃の生理的な働きです。
ところがこの自己免疫性胃炎は、胃酸を出す胃壁細胞の体部腺領域が極端に委縮、衰えているため、ガストリンが来ても酸を出せない状態に陥っているのです。当然血液内にはガストリンが溜まって高ガストリン血症となっています。さらに重要なことは胃酸を出す胃壁細胞が原因は不明ですが、その細胞内に細胞に対する免疫抗体を獲得してしまうので自己免疫性胃炎といわれる所以です。
それは胃酸分泌機構のプロトンポンプ内での異変からとか、ピロリ菌の存在関与の説もあります。まだ明確なことはわかっていません。

またこの疾患には甲状腺疾患を有する方が当院でも、30%にみられこの免疫疾患の関連がいかなることかおもしろいことです。
当院ではこの甲状腺疾患からと高ガストリン血症からこの疾患例を見つけたことも多いのです。
つまり自己免疫性胃炎の成り立ちはいまだによく解っていないとお知りください。

次に、私がこの疾患が興味深いと考えているのは、その委縮した体部腺領域の深層に神経内分泌細胞が増生していることです。これは時に勢いを増してたり落ちたりしていることです。これが集団で巣を造って腫瘍化すると癌細胞に似た類癌性腫瘍(以前これをカルチノイドといいました)が理論的またはマウス実験的において発生する、となっていますが、実際臨床上は発生の報告はありませんし、私の長年の監視経過から一例の発症もありません。 むしろ胃癌が発生しただけでした。現在、これらから腫瘍の発生はないと判断されています

ところが本当に稀に、胃カルチノイド(今は神経細胞腫1型)が発見されることがあります。このときの胃壁には自己免疫性胃炎に見られる細胞集団が広がっており、胃壁細胞抗体も陽性のこと多く、高ガストリン血症にあり、大変よく似た背景胃粘膜を呈しています。しかし実際は似て非なるものとして別に扱うことになりますのでご安心ください。

さて以上この疾患の要点を書きましたが、今も不明な点が多く皆様はお忘れになって結構です。ただこの疾患から胃癌が多くみつけられることをご記憶ください。

大変こむつかしい話を最後までお読みくださり、心より御礼申し上げます。私からこの疾患をご通知された患者様はできるだけ追跡監視にご協力いただければ幸甚です。

▲ページの先頭へ