ピロリ菌除菌した後の方たちへの注意

【No.4】ピロリ除菌後の胃癌発症について

胃内にピロリ菌がいる。これを除菌すれば胃癌を防げると盛んに一時マスコミは喧伝し、たけしやモンタのワイドショウなどテレビ視聴率稼ぎに利用されました。おかげでピロリ菌の存在は広く国民に知れ渡りました。国会でも取り上げられ、当時の厚生省のお役人が公明党女性議員の質問に苦労され答えられていたのを印象深く覚えています。
そして3年前より、慢性胃炎の胃内ピロリ菌の検索と除菌治療が保険診療できるようになりました。現在も多くの人が医療機関へおいでになっています。

ただ知ってもらいたいのは前提条件として、必ず胃内視鏡下でピロリ菌感染による慢性胃炎が存在する!!という確認の下で、除菌治療が許可されるということです。これにはむつかしいことは省きますが、医学根拠に基づいて厚生省は保険を許可したので、単に除菌してくださいとおいでになっても保険診療ではできません。

ところが最近皆様の意に反して、除菌治療したのに数年後胃癌が発症した方が見つかるようになってきました。

私のところでも、20年以上前から除菌治療をおこなっていますが、その中からすでに4-5年後に胃癌が見つかる方を経験し始めていました。

現在除菌後胃癌例は10例を超えています。当院症例は最後に列挙しています。
半数以上が除菌4-5年後例ですが、さらに最近では7年後以降10年を超す方もおられるようになってきました。
除菌後胃癌になるはずがないと過信されていた方が多いと見え、処置後検診されてなくやや進行がんになっている方が半数近くにありました。でも幸い全例が手術処置後お元気でお過ごしのようですが、性格的な面もあるか、まじめに通院に応じてこられない方多く困ったものです。
そしてそれらの方を眺めてみますと一致した傾向がみられています。
まず全例が男性、60歳代以上、喫煙歴に問題がある、現在も吸っている、やめたのは4-5年前それまで20-40本という具合です。また塩気の強いもの大好きという、野菜果物食べないなの傾向が全員ではないが少なからず見られてきます。
そして重要なのは、除菌時の胃が委縮性、化生性の変化がかなり強くなっていたということで、そこから除菌をお勧めした方も多かったのです。

従って、これら症例を通して純医学的に考察しますと、最近の分子生物学からいいますと、ピロリ菌か何かで遺伝子に傷がついて分子レベル胃癌が生じたとします。それが内視鏡的肉眼可視レベル(5-7、8mmぐらいか)の胃癌に成長するまで4-6年かかるという説がでてきています。もしそれが正しければ、言ってみればピロリ菌に感染して慢性胃炎になっている人は、除菌した時点ですでに分子レベル胃癌になっていたかもしれないということです。
しかしそれ以降7-10年以上たってからの胃癌は、下地にピロリ菌感染性慢性胃炎があれば当然のこと、除菌してもピロリ菌以外の外的な習慣性因子から発症して来ることも考えてみるべきでしょう。それは胃癌は青森、秋田、山形、新潟、富山など北日本また山陰地方など、冬など保存食を食す地域に多いという古くからの公衆衛生学統計数字を心して考えてみるべきということです。
日本以外でも、第2次大戦以前の保存食の多かったアイスランドでも胃癌は多くみられたが、戦後フェリーによる流通機構の発達により、ヨーロッパ大陸から新鮮な食物が入りだし胃癌は劇的に減ったという論文を読んだことがあります。アメリカでも西部劇時代のアメリカインデアンも胃癌を多く持っていたという話を聞いたことがあります。彼らの主食はバッファローの干し肉であったということです。今のジャーキーというものでしょうか。彼らもピロリ感染していたでしょう。

ごく最近ピロリ菌非感染胃癌が話題を集め始めています。これは胃上部に集中してくる分化型癌という特徴を持っています。
ただ全体としていえることは、殆どの胃癌はピロリ菌感染胃の慢性胃炎から成り立ってきていることは事実として受け止めるべきでしょう。
そしてそこから胃癌を防ぐには、次のことが必要と結論づけられます。

  1. 1) 除菌した時点が ほぼ50歳以降で慢性胃炎が中等度以上の人は、除菌治療以後も最低2-3年ごとに胃内視鏡検査を受けること。
  2. 2) 除菌治療はできるだけ早く、できれば若い時期に行うこと。
  3. 3) 喫煙はやめること、塩分の濃い干物系タンパク質食品は少なめに、ビタミン系野菜や果物は均等に摂ること。
  4. 4) ピロリ菌感染は乳幼児期に多いといわれます。小学生、中学生時代に感染の有無を調べておき、除菌治療の副作用に耐えられる年齢に達した時に実施すべきこと、これは親の責任というべきでしょう。

以上、私は除菌治療にあたり上の4点を強調しておきます。

次に以下当院でのピロリ菌除菌後胃癌の症例を提示しております。

性別 除菌後年数 Diag 診断
6811年 前庭部大湾側前壁 2C T1a tub1
4010年 胃角部小湾 3+2C進行 T2(MP) por+sig
7810年 噴門部 2C T2(MP) tub 2
708.5年 前庭部前壁 2a+2C T1a(m) tub 1
607年 胃体部後壁 2a+2C T1a(m) tub 1
707年 胃体上部小湾側 2C pT1a (m) tub 1
687年 胃体中部後壁より 2C+3 進行 pT2(MP) por
675年 胃体部前壁 3+2C進行 T2(se) tub 2
505年 胃角小弯 3+2C pT1(m) tub 1
685年 体上部後壁 pT3(si) n1 H0.
705年 胃前庭部後壁 pT1a(m) tub 1
695年 胃体中部後壁 2C pT1a(m) tub 1
714年 胃角部後壁 2C pT1a(m) tub 1
734年 胃体上部後壁 2C pT1a(m) tub 2
734年 胃体上部近噴門 2a+2C pT2(sm) por EBVinf
平均   
66.3   

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