膵臓癌発見への努力
【No.3】膵臓癌発見への努力。
体の臓器の中で、きわめて予後悪く、早期発見のむつかしいのが膵臓癌です。
この癌型は、1㎝ぐらいで見つけても周囲に転移しており、切除しても再発してくる予後の悪さです。愁訴も少なく、上腹部の不快感を訴えた時にはかなり進んでいるのが現状です。最近政財界の有名人にも多く罹患されている報道が目に付くようです。
以前は早期発見のため、ERCP(内視鏡的胆道膵菅造影法)を積極的に行っていましたが、急性膵炎や胆道感染等で死亡に至る事故が全国的に発生し、今は手控えているというのが現状です。
最近はまずCTや超音波診断装置を使い、膵臓の膵管をはじめとした形態をうかがい、さらに精検はMRCP(MR膵管胆管造影)を行う手順が多いと思われます。それで疑わしければ注意してERCP検査へ移行し、膵管の造影、時に細胞の吸引採取で癌細胞を探索するということになります。この段階の検査は当院では行わず、CTや超音波以上は関連病院へ紹介依頼しております。
これでも確定診断に至らない症例もあります。
上のCT像は当院での50歳代男性の膵体部癌症例です。映像下側の背中の真っ白く映っている脊椎骨の右上の大動脈丸く淡い白い部分、のさらに右上の淡いいくつか抜けた像が膵臓癌の塊です。かなり進行癌です。
最近膵臓癌に関連して、膵臓で見つかる嚢胞が注目されています。これは CTや超音波診断で見つかります。膵嚢胞は腫瘍や炎症で膵内の管腔が塞がれ、膵液や粘液が溜まって水たまりの玉ができます。このまま何年も変化を示さない例が大多数ですが、まれに大きくなるような例は悪性変化を疑って精査に回ります。当院では10例近くをCTや超音波で見つけ、追跡させてもらっています。これは主膵管や2次膵管と連なっていて、次第に大きくなってきたと思えるときは要注意となります。このときは県立がんセンターと連携しており、そちらへ紹介精査に回ります。
上は当院での老齢女性。背中の痛み、胸焼け感で来院。MRCP(東市民病院へ依頼)像です。真ん中の横走する白い溝の像(主膵管)に接するように丸い白玉が二つ見えます。これが膵臓嚢胞です。
しかし先にも書きましたが一生大きさの変わらないままの方が多いのも事実です。
膵癌の原因はいまだに明らかでないのが現状です。しかも膵がんは遺伝子に傷がついて、分子レベルで膵がんが発症しても人の目に触れるような大きさになるに10年近くかかるという説もあります。
環境や食物でも膵臓に何が悪いか混とんしております。ただコントロールの悪い糖尿病のある方は要注意です。
当院では積極的に膵がんの発見の努力をしております。無症状の方が多いだけに上腹部不定愁訴で来られた時に、患者様の許しを得て腹部CTや超音波を加味して検査させてもらっています。膵臓の形態や嚢胞の有無、血液検査を加味して検討させてもらっています。
膵がんの発見は、本当にむつかしい病気といえ、医療側の努力にご協力をお願いいたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。